日記

急に晴れた日に長時間外出をし、体力的にも精神的にも絞りとられて、もう何もせん!とふてくされながら読書。
坂口恭平の徘徊タクシー。


読むきっかけは躁鬱日記読後、彼の公式HPの過去の日記を読んだりして、何かしら読んでみたくなったから。私には、建てない建築家といわれても、現代の生を模索する思想家に思えるのだけど、まあ肩書きなんて名乗ったもの勝ちだし、建築から興った思想なのだからそれで間違いないんだろう。
躁鬱日記の魅力は、ぐらぐらしながらの生き方が明確に書いてあるところで、読者に提案もしないし励ましもしない。かえってそこが読者に思考させる余地=安心感を与えるんだと思う。
って、坂口恭平のファンが、思想・作品の根幹を垣間見る、または私生活知れて嬉しい!と単純に思うものでもあると思うんだけど。ファンになったら、色々知りたいもんね。私生活や普段の思考が作品に反映されるんだから、当然かと。
で、徘徊タクシーを選んだのは、図書館ですぐ借りられるのがそれと現実脱出論だけだったから。
徘徊タクシーが私小説なのか全くの創作なのかは分からないけれど、結構事実に近いのでは、と思う。私としてはどちらでもいい。
物語全体としてはそんなにひかれはしないけども、人々や土地、物事への捉え方と表現方法が鮮やかで、魅力的だった。
読んでいて、私の親の実家のこと、今はいない祖父母のことを強く思いだした。実家は小説の土地とは全く異なる場所だし、田舎というだけでなんも似たところはないと思う。
でも、ひとの死とそのまわりの独特の時間の流れを美化無く描いた文章の正確さが、私自身に作品内の徘徊タクシーのようなトリップをさせてくれた。
それが人間と空間と時の関係を重要視する建てない建築家だからこその所業なのではないかと、やや唸った。