#NoBagForMeから浮かび上がる男性中心社会

生理用品を隠して買う必要がない、恥ずかしいと思わなくていい、生理のタブーをなくしていこう、みんなで生理について話していけるといい、というコンセプトでタンポンをデザインする企画の#NoBagForMe PROJECTについて昨日知って、開いた口がふさがらなかった。

*参考記事

ユニチャームニュースリリース

ソフィ『#NoBagForMe』プロジェクト始動|2019年|ニュースリリース|企業情報|ユニ・チャーム

・プロジェクトのnote 

#NoBagForMe PROJECT|note

 

この件で私はひどく悲しくなってしまった。デザインがいまいちだったこともそうだけど、結局、いつもどおり男性社会に認められなきゃ私たちは前に進められないのかと。 

note.mu

 以上の記事から、コンセプトにそぐわなくないかと思った部分を引用します。

塩谷 あぁぁ……可愛い!このイラストがめちゃくちゃ可愛い! それに「オープンに生理用品の話をするのはちょっと……」という方も多いかもしれないけど、どの猫が可愛いか、という話ならしやすいよね。

下記ページに今回の最終3デザイン案が載ってます。ここで話されている猫はここで見られます。

【速報】3種類のデザインが立候補!タンポン商品化に向けた一般投票を開始します|#NoBagForMe PROJECT|note

オープンに話せるのが目標だったはず…。

デザインの猫のどれが可愛いかって、そこまで遠回りにきっかけづくりをしなくても。

 

ハヤカワ このデザイン案だったら、パートナーに生理用品買ってきてもらうときにも「ネコちゃんのやつ買ってきて」って頼みやすそう。

瀧波 生理が来たことも「ネコちゃんが来たから」って表現するとかね。

基本的に自分で買い置きをしておくからまずこんなことねえんだけどな、というごく個人的な疑問は我慢します。読み飛ばしてください。)

それより、ネコちゃんて 。

トークが盛り上がるにつれ、もうどんどんコンセプトから乖離した、ただの楽しい会話になっていきます。

個人的には、「生理」という言葉ってプライベートな付き合い間でもいいにくいのかと疑問に感じました。

 

で、下記のnoteを見て、この企画ってもう少し慎重にできなかったのかとより思いました。

このプロジェクトよりも前に行われた生理用品についてのトークイベントのレポート。そこで生理をタブー視することについて話されています。

「#じぶんにいいこと はじめよう」 イベントレポート(後編)|#NoBagForMe PROJECT|note

5000票のうち70%が生理って呼んでる。

もちろんこれが全てとはいいません。ハヤカワさんみたいな新しいことをやろうとする方*1のツイートを見ているような、ハヤカワさんと近い思いを抱いている方々の傾向、といってしまえばそれでおしまいです。

 でもこの少なくない回答により、「生理」と呼ぶことに対して抵抗をもっている方はそう多くもないのでは…と、もっと先にいけると考えなかったのがすごく不思議です。誰に遠慮して「ネコちゃん」といわなきゃならないのでしょう…というと、パートナーですね。おそらくここで想定されるパートナーというのは、生理について理解が追いついていない方、要は生理のない男性だと思います。

もちろん、2人の間でふざけて名を変えて話すのは別に悪いことでもなんでもありません。親しい仲だけの共通語というものはしばしば存在します。

でもそれは個人的にやるものであって、タブー視をやめようと動く人間が公で推奨することではありません。

そして、ユニ・チャームの人間がここでストップをかけなかったことにも驚きです。社員は私たちよりもはるかに事情を知っている専門家のはずです。これではコンセプトがぶれぶれで、売れ行きのよくないタンポンの話題性作りのプロジェクトに見えても仕方ないです。

 

そもそもなぜ生理を隠してしまうのか、理由は色々あります。

昔から各国で生理が穢れとされていることや(例えば数年前サニタリーボックスは「汚物入れ」と呼ばれていました)、noteの記事にもありましたが生理用品を買うだけで性的な目で見られるという嫌な思いをした方もいます。ここには恥ずかしいもの、隠さなくてはならないものと思わされる女性蔑視があるのだと考えられます。

生理という言葉を隠し続けることを是としてしまえば、紙袋に入れられなくなるのはいつになるか分かったもんじゃない。私たちは生理があることを隠したい、ごまかしたいわけじゃない。特別な意味をもったものではなく、人間の自然な行為だと理解されたいだけ。それなのに生理のない男性の理解を得ようと真っ向から説明もせず、顔色をうかがって「ネコちゃん」だなんて、あまりに馬鹿げていませんか。(大体生理はそんなかわいくねえっての、う○このがちけえよ ※個人的な感想です)

 

もうひとつ、特に指摘したいところ。

デザインについて、いわゆる「ダサピンク問題」から進んでない件。

 

ゆうこす ネコは強いですよね。半年くらい前にネココスメがすごい流行って、雑誌でも特集やってました。

これはゆうこすさん世代のことでしょうか。私はいまいちピンときていません。

ネココスメといえばPAUL&JOEのリップの先端が猫の頭の 

リップスティック スクレドール │ POINT MAKEUP │ PRODUCTS │ PAUL & JOE BEAUTE

を思い出します。何年か前からありますが、販売当初確かに人気だった覚えがあります。

でもPAUL&JOEのようなふわっふわしたかわいらしいデザインのコスメが一般的か?というと絶対にそうではないといえます。

人気のコスメブランドのデザインって、シャープでシンプル、かっこいいものもすごく多い。

THREE、ADDICTION、RMK、shu uemura、MAC、NARS、CLINIQUE、IPSA…

ドラッグストアで買えるマキアージュやコフレドールだってふわふわとは違うし、爆売れアイライナーのフローフシだってめちゃくちゃモードな感じで新しいアイライナーのブランドを今年から売り始めた。

UZU BY FLOWFUSHI | UNFRAME THE BEAUTY

 

そんなに高価でもなくデイリーに使いやすいスキンケアのブランドMARKS&WEBだって、色を使わずにまとめている。

MARKS&WEB

 

以上のようなブランドを知っていると、もっと考えられなかったのかと頭を抱えます。

趣味も性格も違う5人のプロジェクトメンバーたちの最初の課題は、「これまでにないタンポンのパッケージデザイン」をそれぞれが考えてくる *2

彼女たち5人が直接デザインを考えたわけではないのですよね、これって。

想像でしかないけど、ユニ・チャーム側に、何かをとめさせて(そもそも考えつかなかったのかもしれないけど)、何かを推したひとがいると考えてしまいます。要は「ダサピンク問題」が発動してしまったのかなと。

もっとしっかりマーケティングをすれば、1案くらい無彩色のめちゃくちゃモードなものが出てきても良かったのではと思います。3案も出していいのにそれが1案もない。

生理用品を使うひと・女性は鮮やかな色、淡い色、かわいらしい色が好きという悲しい思い込みが留まってる。

参考までに、生理用品の現実はこれ。たまたま家にあった生理用品の写真です。※意図してませんがユニ・チャームの商品がひとつもありませんでした。 花王小林製薬です。

f:id:mnusg:20190731172058p:plain

全部くそださくないですか?ちなみにマイメロのおりものシートはマイメロがかわいかったので買いました。他はスリムだから(黄色)、急を要するために買ったので安さ重視(黄緑)、Tバック用おりものシートはこれしかないから(どピンク・ふざけんな)仕方なく、です。私は買うとき、用途・無香料・デザイン・値段の総合で選びます。だから毎回、売り場でめちゃくちゃ迷います。

 

別の会社ですが(大王製紙)、この赤いのとか(下記)シンプルでかわいいなーと思ったんだけど、用途が合わずで買いませんでした。

エリス コンパクトガード(軽い日用)羽なし 36枚|生理用品|商品情報|エリエール|大王製紙

 

で、件のユニ・チャーム

生理用品・他|商品情報|ユニ・チャーム

大して変わんないんですよね、他のメーカーと。

  

これらが売り場に並んだ際に、シンプルで無彩色、文字のみのデザインのものがあった場合、埋もれてしまうのでしょうか。逆に目立つと思うのですがどうでしょう。

新しい物はまず回避するという消費者がいるのは想像できます。でもインパクトを与えることはできますよね。話題性にも結びつきます。宣伝って、そういうことではないでしょうか。

各社、機能性を追求してくれているのはよくわかります。ヨーロッパで買ったナプキンと比べて、使い心地は確かにいい。それに昔は厚みがあって大きなサイズだったのに、どんどん薄くコンパクトになっていってる。バッグを圧迫しないので、すごくありがたいです。

でも、生理用品は生理があるひとには必需品なので、デザインがどうであろうと買わなきゃならないひとがほとんどです。だからデザインが似たり寄ったりから抜け出さなくてもある程度は売れる。 そこで見過ごされてきたのでしょう。

生理について語りにくいこと、隠すものと思わされること、デザインが後回しにされること。それは生理があるひとに同様のことをしているといえます。決して雑に指摘しているとは思いません。そんなに重要なことじゃないだろう、といわれてきたのです、誰かに。生理に対して理解がない男性中心社会に。

今回のデザイン3案を見て、noteを見て、関係者のツイッターを見て、見事に、昔からおなじみ男性中心の資本主義にやんわりと回収されているフェミニズム的なものが見られて無力感を覚えたとともに、絶対にこれに抗いたいと思いました。

こういうときに、急に大きく動いても理解が得られないよ、というひとは必ずいます。もっと論理的に、わかりやすく説明しないと、と。それは違います、たくさんの方々が様々な嘆きを叫んでいるのだから*3、それを理解をしようと性を問わず誰もが努力する時期なんです。みなが嫌な思いをしないようにみなで解決していく社会、そのほうが生きやすくないですか?

あと、いまどき月経カップやナプキン要らずのパンツ(例:THINX…でもここ労働環境に難あり問題あったからなーちょっと様子見…)、布ナプキンが存在する今、従来のように製品を作り続けていたら、みんなFXXKと中指立ててどんどん逃げちゃうんじゃないかとも思います。

なんてまとめていいか分からなくなってきたのでこの辺で。

 

フェミニズムおすすめ本

*ダサピンク問題との関連書。面白い、うなる、ころげまわる。

www.ele-king.net

 

フェミニズム入門書という感じ、難しくない、読みやすい、おすすめ。廃刊かも?私は公立図書館で借りました。

bookmeter.com

 

(下記はこれについて昨日私が爆裂連投ツイートしたことを若干分かりやすくまとめたツイッターのモーメント。気が向いたら見て。)

twitter.com